……こうしてはいられないわ! あの能天気家族のことだから、もしかしたらわけのわからない問題に巻き込まれているかもしれないもの!

 きっと大丈夫と自分に言い聞かせたわたしだったが、すぐに考えを改めた。

 邸がこんな状況になっているのだ、なにかあったのは間違いない。そしてあの能天気なお父様たちは、能天気すぎるあの性格のせいでなにかに巻き込まれたのだ。

 そう結論づけると、わたしは急いで御者のおじさんを振り仰いだ。

「おじさん! 連れてきてもらったばかりで申し訳ないけど、さっきの駅までまた連れていってくれない?」

 急いで汽車に飛び乗って、まずはアンデルス伯爵領へ向かおう。そうしてヨアヒムに事情を知らないか確認するのだ。

 わたしは馬車にトランクを押し込んで乗り込むと、「急いで!」と御者のおじさんを急かして駅へ向かった。

 そして御者に礼を言ってアンデルス伯爵領行きの汽車のチケットを買おうとしていると、郵便屋さんと思しき外見の青年がこちらに走ってくるのが見えた。

「失礼! もしかしてマルガレーテ・ハインツェル様でいらっしゃいますか?」