見る限り奥の邸には人は住んでいない。つまりお父様たちはどこかへ移り住んでいるはずだ。家族が死んでいたら留学先のコーフェルト聖国に連絡が入ったはずだし、相続だのなんだのとランデンベルグ国からもすぐに帰国するように通達があったはずなのだから。

 ……落ち着いてわたし。大丈夫、みんなきっと、どこかで能天気に暮らしているわよ。

 うちの家族は総じて能天気である。

 お母様はよく『なんでわたしたちから生まれたのに、マルガレーテちゃんはしっかりしてるのかしら~?』なんて不思議がって、お父様は『私たちがしっかりしていないからマルガレーテがしっかりしたんだね~』なんて笑う、本当にダメダメな能天気すぎる両親だ。

 弟はお姉ちゃんであるわたしが大好きで、留学が決まった時は『姉様と離れたくない』と言って大泣きしたシスコンで、やっぱり能天気。

 わたしは生まれた時から前世で二十歳まで生きた記憶があって、しかも前世では早くに家族を亡くしてひとりで頑張って生きていたから実年齢よりもしっかりした性格だった。

 それが幸いしてなのかどうなのか、今世の生みの親の性格は引き継がなかったらしい。