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「マルガレーテ、合格おめでとう~!!」

 試験の日から一週間後。

 合格者リストを見に城の入り口に向かったわたしは、張り出されている紙に自分の名前があるのを見つけた。つまり合格だ。

 ヨアヒムの名前はなかったので、不合格だったのだろう。まあ、そうだろうとは思っていた。だって、わたしが知る限り、ヨアヒム、聖魔法ほとんど使えないもの。なんで試験を受けに来たんだろうって思ったくらいだわ。

 わたしが聖魔法騎士団の入団試験に合格したから、今日は一応ご馳走だ。

 まあ、ご馳走といっても、玉ねぎとパン粉でかさ増しした、わたしのお手製ハンバーグとスープ、それからパン。あとはデザートの、これまたわたしの手作りプリンである。

 借金を抱えてからお母様が料理を頑張っていたようだが、はっきり言って、お母様の料理は適当も適当だ。蒸した芋。塩水にちょろっと野菜を投入しただけのスープ。肉が手に入れば肉を焼く。そのくらいしかできないので、我が弟エッケハルトには大変不評だった。

 お父様はお母様が頑張って作っているのを知っているので、『美(お)味(い)美味しいよ~』と言いながら食べていたようだけど、お父様がそんなことを言うものだからお母様がそれ以上を目指すはずもない。

 おかげで、わたしが帰ってきてからは料理担当はもっぱらわたしになっていた。

 ……だって、エッケハルトが泣きつくんだもん。かわいい弟の願いは叶えてあげたいじゃない?

 ただ、わたしの聖魔法騎士団への入団が決まったため、今後はそうはいかなくなる。

 なぜならわたしは日中は仕事なので、どうしても昼食はお母様に作ってもらわなくてはならないし、騎士に同行したり、慰問に向かったりする予定が入れば何週間も留守にすることだってありえるのだ。

 そのため、わたしはお母様に簡単な料理を教えて、なんとかレパートリーを増やしてもらった。

 料理って、こんなに手間がかかるのねえ~、なんて面倒くさそうな顔で言ってるから不安でしかないけど、息子のためなら頑張ってくれると思いたい。

 ……待っていなさい弟よ。初任給が入ったら、美味しいお菓子を買ってあげるから!