わたしはゆっくりと、腹部全体に聖魔法をかけていく。

 疾患が消え、内臓機能が戻れば、やがて黄疸も消えるはずだ。

 治癒を終えると、男性患者がお腹のあたりを撫でて笑った。

「ああ、痛くなくなったよ。ありがとう」

「よかったです。数日様子を見て、あとは先生の指示に従ってくださいね」

 わたしは次に、その患者の隣のベッドへ向かった。

 そこに寝ていたのは六十歳前後ほどの男性だ。

 息をするたびにひゅーひゅーと音がして、熱もあるため、肺炎が疑われる。

 ……まずは肺に癒しをかけ、あとはポーションを飲みながらウイルスを殺せば大丈夫ね。

 自作であれば、試験にポーションを持参していいことになっている。

 聖魔法で治癒するか、それともポーションを使うかの判断ができることも試験の重要な要素だからだ。

 ポーションには種類があり、中にはその聖魔法使いしか知らないような秘伝のレシピもあったりする。どの薬草をどのくらい組み合わせるかによって効果が変わるため、聖魔法使いは独自にアレンジを加えたりするのだ。

 かくいうわたしも、研究に研究を重ねて独自のレシピを持っている。今日はその独自のレシピで作ったポーションを数種類、二十本ほど持ってきていた。

 わたしはまず男性の肺に聖魔法をかけ、その後で鞄から体内のウイルスを殺すことに重点を置いたポーションを取り出した。

「息苦しさは消えましたか?」

「ああ。よくなったよ。ありがとう」

「よかったです。ただ、体の中にはまだ悪い菌……ええっと、病気の卵のようなものが残っているため、このポーションを飲んでください。一本でも効くと思いますが、念のためもう一本渡しておきますので、これは明日飲んでくださいね」

 患者にポーションを二本渡して、わたしは自分の手のひらを見つめる。