……黄疸が出てるわね。

 肝炎か、もしくは、肝臓癌やすい臓癌って可能性もあるかもしれない。
 
 前世でいくら看護学校の学生だったからといって、実践を積んだわけではないので素人同然だ。決めつけるのはよくない。

 ……でも、多少場所を絞った方が効率がいいし、効きもいい。

 わたしは内臓全体に聖魔法をかけることにした。

 特定の箇所に聖魔法をかける方法はわたし独自のやり方といってもいい。

 目に見える怪我ならともかく、病気が相手ならば、聖魔法使いは全身に聖魔法をかけるのだ。それが正しいやり方だと言われている。

 確かに、全体にかけてしまえば見落としはない。

 だが、効率がすこぶる悪い。なぜならその分、多くの魔力を使うので、一度にたくさんの人を癒せなくなるからだ。経験や保有魔力の大小にもよるだろうが、平均的な能力の聖魔法の使い手で一日に二、三人治せるかどうかというくらいだ。

 少なくともこの部屋の四人は全員治してあげたいので、わたしは効率を重視することにした。

「マルガレーテ、その患者は怪我ではありませんよ」

「はい。承知しています」

 わたしが患者の腹部に手を当てたからか、ミヒャエラさんが不思議そうな顔をする。病人の場合は手を握って全体に聖魔法をかけるのが普通だからだろう。

 ミヒャエラさんはそれ以上はなにも言わず、ジッとわたしのやり方を見ていた。これも試験なので、あまり口を出してはいけないようだ。