……あんな人、いるんだ……。

 後から知った話だが、ちょうどあの日、フリードリヒ様たち聖魔法騎士がうちのハインツェル伯爵領に慰問に来ていたらしい。

 どうやらそのせいで、いつもより病院は人が多かったみたいだ。

 聖魔法騎士たちは慰問に来てもわざわざ領主に挨拶したりしないから、お父様も知らなかったようで、運がよかったなあと泣いて喜んでいた。

 ちなみに、お父様は名前も名乗らずに病院の受付で騒いでいたらしく、後からお父様が領主だと知った病院の院長が血相を変えて我が家に謝罪に来たのを見た時にはあきれてしまったわね。

 ……お父様、本当に迷惑をかけて。

 うちのお父様は権力を振りかざすようなことはしないけど、院長からすれば領主を無下に扱ったと血の気が引く思いだったに違いない。

 平身低頭謝罪する院長に、子ども心に胸が痛んだものである。父よ、もう少し考えろ? うちの子の怪我は治ったから気にしてませんよ~ははは~じゃないからね。