ジッとこちらを見下ろしている藍色の瞳を見つめ返してぽーっとなっていると、彼はわたしのそばに膝をついた。

『ああ、ひどく切ったな。かわいそうに。待っていなさい』

『フリードリヒ様、今日はもう……』

『この程度の怪我を癒すくらいの魔力なら残っている』

 そばにいた部下の人をそう言って制して、イケメン――フリードリヒ様がわたしの傷に手をかざす。

 傷がふわりと温かくなって、瞬きを一度する間に痛みが消え、傷が塞がっていた。

『これでよさそうだな。だが、血が多く出ていたようだから、今日は一日おとなしくしておきなさい』

 ぽん、とわたしの頭に手を置いて、フリードリヒ様がうっすらと微笑んだ。

 ……わーわーわああああああ! カッコいい!!

 ぽーっとなるわたしを置いて、フリードリヒ様はすぐにいなくなってしまったので、まともにお礼も言えなかったことだけが心残りだ。

 受付に向かって騒いでいたお父様が戻ってきて、怪我が癒えていたわたしに驚いていたが、お父様に説明する心の余裕もなかった。