わたしは腕を組むと、じろりとヨアヒムを見上げた。

 ヨアヒムは特別背が高い方ではないが、女性の平均身長であるわたしと比べると十センチかそこらは高いので、目を睨みつけてやろうと思うと視線を上げることになる。

「試験の申し込みをした時に拒否されなかったわたしが、どうしてあなたの言うことを聞いて帰らないといけないわけ?」

「なんだと? 俺はお前のために言ってやってるんだぞ。聖魔法騎士団はエリート集団だ。お前みたいな落ちぶれた人間が受かるはずがないんだよ。恥をかきたくないだろう?」

 ……恥と言うなら、あんたがさっきから大声で『没落』だの『落ちぶれた』だの言ってくれるおかげでもうすでにかいているけどね!! むしろあんたの存在が恥よ!!

 試験会場で喧嘩を吹っかけるような男が知り合いだと思うと恥ずかしくて仕方がない。

 さっきから注目を集めているみたいで、視線が痛いし。

 わたしは早々に、この恥ずかしい男から離れることを決断した。

「ご忠告どうも。でもわたしには必要ないわ。じゃあね」

 おしゃべりをしていたら試験官に睨まれるかもしれないし、こいつのそばにいたらイライラするし、わたしはすたすたと試験グループが書かれている紙が張り出されている掲示板へ向かう。