……くぅ! こんなことなら、前世で異世界転生ものの小説や漫画を読み漁っておけばよかった!

 友達に勧められて、一部が無料で読める電子書籍サイトで少しは読んだけど、主人公たちは異世界で生き抜くためになにをしていたっけ?

 必死になって遠い昔のことのように思える前世の記憶を手繰ったわたしは、ハッとした。

 ……そうだ! 前世にあったものを異世界にあるもので再現して売りさばいて大儲けする物語があったわ!

 これだ、とわたしは拳を握りしめる。

 そして、宣言した。

「お父様、わたしがアイディアグッズの案を出すから、みんなでそれを作って! そして、頑張ってお金を稼いで領地を取り戻すわよ!」

 わたしは入団試験に合格して聖魔法騎士団に入団する予定なのでずっとはついていられないが、仕事終わりや休日を使えばいい。

 なんとかお金儲けの手段を見つけなくてはと言ったわたしに、お父様たちは首をひねった。

「あいでぃあぐっずって、なんだい?」

 ……確かにこの世界にそんな単語はなかったわね。

 逆を言えば、主婦の知恵的なアイディアグッズは誰も作っていないということよ。

 わたしはお父様たちに「アイディアグッズ」を説明しながら、最初は元手がかからずに簡単にできるものがいいわよねと、考えを巡らせた。