ここは、我がハインツェル伯爵領。

 そして、目の前には、ハインツェル伯爵家のカントリーハウスがある。

 一年前の我が家は、今年十歳になる、まだやんちゃ盛りの弟エッケハルトがいるからか、笑い声の絶えないにぎやかな家だった。

 大勢いた使用人たちとも仲が良く、庭には季節の花が咲き誇り、庭の散策が好きなお母様が日傘をさして歩き回る姿が、毎日のように見られていたはずだ。

 それなのに、固く閉ざされた門の向こうの庭は、枯れた雑草と新しく芽吹いた雑草の両方が生い茂り、綺麗 に整えられていた花壇は見る影もない。

 なにより、人気がない。

 そして、なぜか門には太い鎖が侵入防止を伝えるようにぐるぐる巻きにされて、大きな南京錠までかかっていた。

「どういうこと――――――!?」