「で、なにがあったわけ?」

 野菜の苗を植え終わる頃には、エッケハルトとお母様が戻ってきていた。

 野菜と肉を買って、それから数個の飴も買ってもらったらしいエッケハルトがにこにこ笑っている。甘いものは久しぶりらしい。……うぅ、わたしのかわいい弟が。

 お父様もわたしも土いじりをして汚れた服から着替えてきて、わたしたち家族はダイニングに集まっていた。

 サロン? この家にそんな洒落たものはない。

 お母様が「お茶を入れるわ~」と言ったので待っていたら、出されたのは白湯だった。

「……お茶?」

「ティーカップに入っていたらお茶でしょ~?」

 なるほど、茶葉を買う余分なお金はなかったのね。理解した。でもねお母様、ティーカップに入っていても、白湯は所詮白湯よ。勝手に紅茶に進化したりしないの。

 先ほどわたしの手持ちのお金は渡したけれど、この一年ですっかり節約が身についたお母様は茶葉なんて買わなかったらしい。それよりも食べ物を優先したのだろう。

 エッケハルトは、白湯には興味がないようで、買ってもらった飴をひとつ口に入れて嬉しそうだ。

「パパも飴ちゃん食べたいな~」「パパはだ~め 」と呑気にやり取りしている両親に、わたしはこめかみに手をやった。頭痛が……。