人がひとり通れるくらいの小さな門扉を開けて中に入ると、小さな庭があった。

 その庭の一部が花壇にされていて、春の花が咲いていたことにちょっとホッとする。花を育てるくらいの心の余裕はあるらしい。

 狭い庭を横切って、わずか数歩で玄関扉に到着すると、わたしは玄関前に取りつけられている錆びた呼び鈴を鳴らした。

 鈍い音が響く。

 玄関扉が薄いのだろう、奥からぱたぱたという足音が聞こえてきた。

「はいはいは~い」

 能天気な、母コルネリアの声が聞こえてきて、わたしはがっくりと脱力しそうになる。

 ……お母様が出てくるってことは使用人はいないんだろうけど、この状況でそのテンション……さすがだわ。

 もっと落ち込むとかないのだろうか。……いや、あるはずがない。だってうちの家族だし。

「は~い……って、まあ! マルガレーテちゃん! おかえり~」