汽車に揺られること数時間。

 王都の駅で降りたわたしは、駅を出てすぐのところで辻馬車を捕まえて、お父様が手紙に書き記していた住所へ向かってもらった。

 住所を見るに、貴族街ではなさそうだ。

 治安の悪い下町でなかったことに安堵すればいいのか、それとも、書かれている住所がもともと王都に持っていたタウンハウスでないことを嘆けばいいのかもわからない。

 ……多分、タウンハウスも領地の邸と同じく取り上げられたんでしょうね。

 住んでいないのだから、つまりはそういうことだろう。

 ……邸をふたつも取り上げられるなんて、本当になにがあったのよ!

 大通りから細い道に入り、しばらく行ったところで馬車が停まる。

 御者にお金を払ってお礼を言って降りると、目の前には古ぼけた小さな二階建ての家があった。長屋でないだけよかったと思うべきだろうか。

 ……でも、屋根はボロボロだし、外壁も汚いし、多分長年人が住んでいなかった家なんでしょうね。でもまあ、前世の日本基準で考えると、そこそこの広さの中古物件ってところだけど。

 日本は土地が狭いくせに人口が多いから、どうしても狭いところにぎゅうぎゅうに家を建てる傾向にあった。特に都市部ではその傾向が顕著になる。

 そんな前世と、国土面積が広く、人口密度も前世に比べて半分以下の今世では、家の大きさは比較対象にはならないが。