ハイネside



「ねぇ、母」


「な~に?」



中学に入ってすぐの頃だった。



一緒のクラスになった子に「珍しい名前だねー」なんて言われた。



それまで、気にしたこともなかった。



「あたしの名前って、どんな意味??」

「意味~??」



母は、おっとりとした子供のように無邪気な人だったな。



「最初はハコネだったわね~」



ハコネ!?!?


え?あの?



「颯(はやて)と寧々(ねね)の子供。の頭文字を取って、"ハコネ"」



ん…。

ちょっと納得…………??




「でもそれじゃあ可哀想だからって、颯がね」



うん。本当。

可哀想だ…。



「颯と寧々の愛しい子供で"ハイネ"にしようって」



ふんにゃりとそれは幸せたっぷりに笑った母。



「愛しいって」


「漢字がね~。あたしたち二人とも馬鹿だったから思い付かなくて…だからカタカナ」



それが、

あたしの"名"の意味。

あたし"らしい"。



「あなたがあたしたちの所に生まれて来てくれて、父も母も幸せよ、"ハイネ"」


「んにょぁぁぁぁ!?」


「お?なんだ、なんだ?面白そうだな!!父も混ぜろー!!」


「にぎゃぁぁぁぁあ!!」



いつもの朝だった。

3人で朝御飯。

1人娘を構いたがる大好きな両親。



こんな毎日がずっと続くと思ってた。