麻也side



ハイネが拐われてから二時間近く。



真中が目覚めたと連絡があって、俺と竜くんは病院の廊下を歩いてる。


消灯時間の過ぎてる病院は恐ろしいほど静かで、二人分の足音が異様に響く。



どこに居る?

怖い思いなんてしてないか?

痛いことなんてされてないか?



クソッッ!!!!

なんでっっ!!!!



「麻也」



足の止まった俺を竜くんが呼ぶ。



「足を止めるな。今は歩け」


「………っ、でもっ!!」


「悔いて足を止めれば、チビは帰ってくるのか?」


「っっ」



わかってる!!

わかってるよ!!

でもっっ…!!



知らず、下を向いてた顔を上げれば、真っ直ぐ前だけを見て歩く"総長"の姿。



非常灯と最小限の明かりだけの暗い廊下。



その中でハッキリ見えた竜くんの手。



「……っっ!!」



血が滴り落ちるほどキツく…キツく握りしめられた拳。