胸元で、ぎゅぅぅぅぅっと何かを守るように握り締めてる。



きっと、あの笛だろう。



「チッ」



忌々しい。


せめてベッドで寝てくれてれば、楽なのに。



「うう…んっ」



抱き上げ、ベッドに寝かす。



「………や…くも…さん」



"会いたい"



それは、小さく小さく祈るように零れた言葉。



聞こえねえし、お前は俺のだから誰を呼ぼうが関係ない。



しかし、厄介だな。



俺は看病なんてしたことないし。



さっき抱えた体は熱かった。


熱が高い。



脂汗も酷く、ずっと痛みがあるんだろう、表情は苦し気なまま。



気は進まんが、アイツを呼ぶか。



スマホを取りだし、ずっと切ってた電源を入れる。















そのとたん、けたたましく鳴り響く着信音。


知らない、登録されてない番号。



間違いなく、アレからだろう。



あの顔だけは綺麗な生意気な男。



美優か??

アイツからこの番号がバレたんだろうが。



まっ、あの妹がどうなろうと、どうでもいい。



コレが手に入った今。


コレが誰のか、思い知らせてやるよ。



俺は笑って、通話ボタンを押した。