「竜ちゃん。帰るべ。時間の無駄だ」


「そうだな」



俺らは、女に兄貴の居場所を吐かすことを諦めると、さっさと女に背を向けて歩き出す。



女の態度も言葉からも、兄貴が今回の犯人であることは間違いない。



だとすれば、探す方法は幾らでもある。



「待っ…待ってよ!!!!」



焦った女の声に、竜ちゃんが足を止めた。



「あたしを"黒豹"の姫に、吉良竜希の彼女にしてくれたら教えてあげても、いいけど!?」



………



俺も足を止めて振り返れば、ニタァっと笑う女。



この女が竜ちゃんの女?

"黒豹"の姫??



「ちょっとぉ、聞きました??竜希の奥様」


「ええ。ええ。しかと聞きましたわ。桂の奥様」


「総長の女とか」


「"黒豹"の姫だとか」


「「うふふふふーー」」



二人で顔を見合せ笑いあう。



「なっ!何よ!?」



何が始まったのか、わからない女が叫ぶ。



「悪いな。あんたは全く好みじゃねぇし」


「"黒豹"の好みでも全くねえ」


「……ぐっ…」



顔を真っ赤にして目を吊り上げる女に、俺らは笑う。