桂side



「え!?"黒豹"の桂!?」


「え!?なんで、うちの高校の前に居るの!?」



女達の大きい甲高い声が徹夜明けの頭にガンガン響く。



あまりの不快さに舌打ちする。



一年近く、ずっと続いた"朝ごはん"の日課が初めて行われなかった………。



だから飯も食ってねえ。



アイツが作る飯でなけりゃあ、皆が揃わなけりゃあ…食う気もおきねぇ。



「桂~!!カッコいい~!!」


「ちょっ!声かけてみようよ!!」



壁に寄りかかる俺の周りに、女が集まってくる。



いつもの俺なら、手を振って愛想でも振り撒いただろうが。



大切な"妹"が拐われて、未だに行方がわからねぇのに、笑えるかよ。



『人を探してんだよ。邪魔だから、俺の前から退けろ』


「ひっっ……」


「……………っっっ!?!?」



俺の表情と声に集まってた女達が、波がひくようにいっせいに引いた。




「やだぁ、桂ってば!!どーしたの??いつもの桂らしくないじゃん!!あたしで良ければ話聞くし、憂さ晴らししたいなら付き合うよ??」