「ひまり、トースト焼けてるから早く食べちゃいなさい」

駆け足で階段を降りると、すでに朝食を用意してくれてたお母さんがテーブルにトーストを置いたところだった。
「ありがと」と早口で返して席に着く。
程よく焦げ目のついた食パンにマーガリンを塗り、その上にイチゴジャムを重ねてほおばる。

顔を洗って、ストレートアイロンで寝ぐせのついた髪を伸ばす。
一通り準備を終えて鏡の中を覗き込むと、そこには胸まで伸ばしたまっすぐな黒髪の女子が映っている。

ストレートの真っ黒な髪に、色白の肌。
無表情だと不機嫌にみえる、少しつり目気味奥二重の目。
特別かわいいわけでも、特別残念なわけでもない。好きでも嫌いでもない、わたしの顔。

鏡の前で軽く身だしなみを確認してから、普段より格段に軽いリュックを背負う。
スニーカーを履いて、「いってきます」とつぶやきながらいつもよりも少し早く玄関から一歩踏み出す。