「ふ、2人とも……?どうして睨み合ってるの?」



それに、私に触れるって何……?



「もぉ〜〜!ほんと、鈍感なんだから〜……って、あ!」




私を更に強く抱きしめていた柚葉ちゃんが、何かを思い出したように声を上げた。



「ヤバイ……先生に呼ばれてたの忘れてた!ごめん、今から行ってくる!」


「えっ?ちょ……柚葉ちゃん!?」



私を離すとすごい勢いで教室を出て行った柚葉ちゃん。


あの急ぎ様……もしかして、学校一怖いといわれている針山先生にでも呼び出されたのかな。




「……あ、そういえば僕も先生に呼ばれてたんだった。ごめん、夢犀さん。また後で〜」



フリフリ〜と手を振って中田くんも教室を出て行った。


2人して先生に呼ばれてたなんて……。


なんだろ、先生に呼び出されるなんてよくある事なのに。


なんでか……引っかかる。


こう――――小さな棘があるような。


………きっと、勘違いだよね。




私は違和感を頭の中から追い出して、席についた。



*   *   *   *



「きりーつ。礼」




ふぅ〜〜。5限目終わり〜〜。


授業って、楽しいな……。


私は中学3年生の3学期から、今住んでいるアパートに引っ越したんだ。


そして、私のいた施設の決まりで、施設を出て一人暮らしをした人は全て自分でやるということで、私は中学3年生の時期はほとんど学校に行かなかったんだよね。


お金が必要だから、親戚中を回ったんだ。