『ねぇ、あんた最近吉田くんに近くな〜い？』



そう言われると、私を呼び出した女子３人が私を囲み込んだ。


吉田くんは、クラスで１番かっこいい男の子。


確かに最近、よく話しかけてくる男の子がいるな。


本当に、『そういえばいたな〜』くらいの感覚だったけど、やっぱりモテる人にはファンがいるんだ。


だからこうやって、誰かがその人の近くをうろつくのが、きっと許せないんだ。




『近くない。それに、近づいてくるのは吉田くんだよ？なんで、私がこんなふうに責められなきゃいけないの？』


『っ………！何その態度。ムカつく！！』




すると、リーダー的な女子が、腕を振り上げた。


その瞬間、私はすぐにその腕を掴み、私の背後にあった壁に押し付ける。


一瞬の出来事で、皆何が何だかわからないっていう顔だった。


………まだ、家族が生きている頃。


私はお父さんの言い付けで合気道・柔道・空手を習っていた。


だから、こういうのは簡単に抑え込める。


今まで、一度もこんな事はやったことがなく、私はいつも蹴られたり、殴られたりするのを受け入れていたから、きっと私はやり返さない。そう思われていたんだと思う。






――――――――だけど。






もう、耐えられない。


今までに何度も暴力を振るわれ、身体にはあざや打撲痕が残っている。


私は……何で抵抗しなかったんだろう。


きっと………人を傷つけたくなかったのかな。