悔しすぎる。



「もう一回……と言いたいところですが、負けは負けですよね」


「へぇ~。なんか意外。しれっと帰っていくかと思った」


「……一応、勝負は勝負なので」



本当に、勝負じゃなかったら帰ると思うくらい、悔しい。


まさかの耐性って……。



「それで?命令は何ですか」


「う〜〜んそうだなぁ」


「できるだけ早めにお願いします。帰りたいので」




そうだ。もうすぐ新月なのだから、早く帰りたい。




「じゃあさ、俺のこと――――名前で呼んでよ」


「な、名前っ?」


「そ。さっきからずっと『宇月先輩』でしょ?ちょっとでも仲良くなりたいし〜、輝って呼んでよ」




い、いきなり名前……。




「あ、輝、先…輩……」


「途切れ途切れー。はい、もう一回」


「……あ、輝…先輩」


「まだまだ。もう一回」


「あ、輝先輩……」


「もう一回!」


「輝先輩……!」


「そうそう!いい感じ。

それじゃあ、これからもそう呼んでね?星那ちゃん」




そう言って、ゆっくりと輝先輩は去って行った。