帰りたいならやらなければいいのに、と思ったけど、ここで帰ったらこれからも絡んでくるんだよね。



「そうですね。私も早く帰りたいですし、チャッチャッと終わらせましょう」


「いいねいいね〜。乗り気になってきたじゃん。それじゃあ、始めよう」



宇月 輝は私に壁ドンしたまま私を睨みつける。


私もそれに対抗するように睨み返す。


最初はどちらも、本当に軽いもの。


それが、1秒、1秒を刻むたびに鋭くなっていって、殺気もで始めていく。


ていうか、顔近……。


やっぱり睨まれているとはいえ、こんな近くにこんな綺麗な顔とかヤバすぎ……。


正直、ずっと闇月として活動してて……その、お、男の人とかの関わりが少なかったせいで、た、耐性がないというか……。


なんでこの人、無駄に顔がいいの!!


私は恥ずかしさを隠すように、もっと鋭さを強め、殺気も増した。


すると、宇月 輝が、私がまだ睨みや殺気を強めたことに驚いたのか、ほんの少し目を見開くと更に圧を強めた。


そして、少しずつ顔が近づいていて、どちらかが少しでも動けばキスしてしまいそうな距離。


勝負を始めて、5分。なかなか決着がつかない。


で、も……そろそろ、限界かも……。


あまりにも、近すぎる……!


その瞬間、私は感謝的に顔を逸らしてしまった。



「逸らしたね、夢犀 星那チャン」


「そ、んな……」



こ、こんな負け方……!


この勝負の敗因は、私に男性の耐性がなかったことだ……。