驚いている長瀬にそう言うと、顔が見えなくても長瀬が喜んでいるのが分かる。

「次の店舗って……いいんですか!?」

「うん、今日は何も予定ないし。……あ、でも条件がある」

ぬいぐるみを持ち上げて出口の上に移動したのを見てしゃがむ。

「なっ、なんでしょう!なんでも言ってください!」

落ちてきたぬいぐるみを取って、どんとこい!とでも言いたげな長瀬に向かって突き出す。

「さん付けと敬語、やめて?」

「……」

……あれ?

「長瀬ー?」

反応がなかったから、さっき取ったリリーを長瀬の前で動かすと、やっと瞼がパチリと動く。

「……な、名前で、呼ぶと……言うことでしょうか」

「はい。そうです」

大真面目な顔で確かめるように聞いてくるから、私も敬語で返す。

「け、敬語を……やめるというのは……敬語をやめるって、ことで……こと?」

「……うん敬語をやめるってことは敬語をやめるってことだよ」

「そ、そうですよね……すみませんっ、変なこと言って……」

自分の言い方が変だったことに気がついたのか、恥ずかしそうに頬を赤らめる。

……やっぱり、長瀬の表情って面白い。

「で、いいの?嫌なの?」

「えっ……と、こ、ここ……」

何度も噛みながら何かを言おうとする長瀬。

「ここ?」

「こっ、ここな!……ちゃん、とっ、取ってくれて、あ、りが、とう!」

長瀬は、これでもかってくらい顔を真っ赤にしてそう言ってくれる。

「い、今……名前で呼んで、くれた……?」

「い、言わないでください……っ、じゃなくて、言わないで……」

よっぽど恥ずかしかったのか、リリーで顔を隠してしまう。