「ここな〜、今日ゲーセン行かない?」

「おぉ、いいじゃん。いこいこ」

私のクラスは基本的にみんな明るくて。

「え、じゃあ俺らも行きたい」

「いっそのことクラス全体で行くか!」

クラス全体で仲がいいクラスだ。

「長瀬もいこーぜ!」

「……いや、僕は遠慮しとく」

ただ、一人を除いて。

        + + +

「長瀬、今日も来てくれなかったね」

サメの人形と見つめ合って手元を見ずに私がそう言うと、イツメンふたりが私の後ろから合図値を打つ。

「俺らのこと苦手なのかもなー」

そう言ったのは、茶髪が特徴的なクラスメイト、中村で、それに続いて前下がりのボブがよく似合っている琴葉も同意する。

「あー、長瀬ってザ・明るいって感じじゃないもんね」

長瀬は別に性格が暗いとか、話しかけにくいとか、そんなんじゃないけど、本人が私たちから少し距離をとっている雰囲気が少しある。

ただ単に私たちの雰囲気が苦手なだけかもしれないけど……。

私は金髪にピアスだし、中村は茶髪、琴葉は黒髪だけど、少し近寄り難い雰囲気がある。

それゆえ、一部の人からは結構避けられていたりもする。

校則で装飾品とか、髪染めていいって言われてるんだから、文句は言わせないけど。

「長瀬にとって一人の方が楽なんだったら、あんまり誘いすぎてもダメなのかもねー」

そう言いながらアームを下ろすと、綺麗にタグに引っかかって、そのまま出口まで引っ張られていく。

ドサッ

人形が落ちる音がして、足元を覗くと愛くるしい顔が私を見つめている。

……かわいい。

「ここなってほんとクレーンゲーム上手いよね」

「そう?」

「そうだろ。俺だってそんなにすぐ取れねー」

羨ましい才能だぜ、とボヤく中村。

その時、中村のスマホからなにかの音楽が流れてくる。

「あ、悪い。俺、このあとバイトだから帰んねーと」

それはアラームの音楽だったらしく、スマホを確認した中村は帰る用意を始める。

「私まだ取りたい人形があるから残るけど、琴葉は帰る?」

「うん。私も、妹のお迎え行かなくちゃ」

中村に続いて立ち上がった琴葉に手を振って、二人を見送る。