そして土曜日、私達はデートに行った。行先は近場の遊園地だ。学校で相談を重ねた結果、こうなった。
正直、今日は楽しみだ。男子とのお出かけなんてしたことがないし。
もしや、この偽装カップル計画を一番楽しんでいるのは私かもしれない。
だって、こんな楽しそうなイベント他にないもん。
「お待たせー! 待った?」
敢えて五分遅れていく。理由はシンプルだ。五分遅れることで、カップル感を周りに醸し出すことが出来る。これも、彼にカップルの呼吸を学んでもらうためだ。
勿論私は人と付き合ったことなんてないのだから、私も学ばなければならないのだけれども。
「じゃあ、まず何に乗る?」
「えっと、じゃあ……ジェットコースターで」
なるほど。ちなみに私はどちらかと言えばジェットコースターは苦手だ。少し気持ち悪くなり、数分の休憩が必要だ。でも乗れない程じゃない。ここは、仁志君のために一肌脱いであげよう。
「あははははは」
ジェットコースターの上で彼は思い切り笑う。その中私は、「ぎゃあああああああああ」叫んでいた。
とはいえ、隣の仁志君の楽しそうな顔を見ると、そんなのどうでもいいやと思う。
ジェットコースターのしんどさは一気に仁志君の顔で吹き飛んでしまう。
「はあはあ」
それでもしんどいのは変わらないのだが。結局仁志君の楽しそうな顔を見れた代償として、ベンチで七分間、気持ち悪さで悶えていた。
しかし、仁志君はそんな私に対して、「水いる?」「背中さすったほうがいい?」と、色々気遣ってくれた。
可愛いかよ。
本当、いつもはあんまり仁志君に対して何とも思っていなかったけど、実際はかわいい人だ。
その後、コーヒーカップに乗る。こちらはだいぶ楽だった。
そして最後は観覧車だ。
仁志君と向かい合って、座る。観覧車という個室なこともあり、互いに顔が赤くなっている気がする。どうしようか、胸がドキドキする。私まで緊張してどうするんだと、言いたい。
「今日どうだった?」
とりあえず、私の中の変な感情を殺すように言った。
「楽しかった。まさか、大江さんと一緒に行く遊園地がこんなにも楽しいって思ってなかったから」
「楽しそうじゃなかったってこと?」
「いや、そうじゃなくて、期待値はもともと高かったけど、それをはるかに超えたって言うか、想像以上って言うか、えっと」
分かりやすく戸惑う仁志君。かわいい。だが、段々可哀そうになってきたので、「冗談よ」と言った。
「冗談ですか。良かった」
「少しいじめ過ぎたね」
そんな会話をしている間に、観覧車が上の方に来た。いよいよ周りの景色が早大に見える。
私がどこかの悪キャラなら、人がゴミのようだとか言ってそうな景色だ。
「素敵ね」
「うん。まさか観覧車からこんな景色が見られるとは思ってなかった」
「私も。この景色大事にしたいね」
「うん」