まず、捕まえた女の手を、いや、手というよりは指だな、そう、指、指だ。その中でも親指が一番良い。両手の親指を背中側で合わせて、結束バンドできつく、きつく、皮膚に食い込むくらいにきつく、きつく、指の骨を折るくらいにきつく、きつく、止めるわけ。これだけでも拘束はできるが、俺はかなりの心配性だから、変な小細工ができないように、残りの指、親指以外の、人差し指、中指、薬指、小指を、まあ、そうだな、全部手で折るか、刃物で切るか、鈍器で潰すかして、とりあえず、機能停止にさせるんだ。方法はいろいろあるが、折るのがやっぱり手っ取り早いかなと思って、大体いつも折ってる。気分によっては切ったり潰したり。その場合はもう血塗れ。始まってもないのに。そう、そうだよ、まだ始まってないんだよ。どの方法で指を破壊しても女は泣き叫ぶが、まだそれは本番じゃないってことを俺は言いたいんだ。あれは心配性な俺を安心させるためでもあるし、本番前の準備運動でもあるからな。指の骨を折ったり、切ったり、潰したりするのは。そうだ、ここで一つ問題。俺が最近行ったのは、その三つのうちどれだと思う? ポキ、ポキ、ポキ、ポキ、ポキ、ポキ、ポキ、ポキ。正解は、骨折。その確率が高いから、きっと簡単な問題。
 さて、俺の心配事がなくなった。結束バンドでしっかり止めた、まだ生きてはいる親指二本と、もう死んだ残りの八本は使えなくなった。つまりだ。女の両手は使い物にならなくなったということだ。言うまでもないか。ないな。ないだろうな。そんなことも分からないような馬鹿なんかいないな。女の指は俺よりも細くて短くて小さくてポキポキポキポキ折りやすかったことも。分からなくなんかないだろ。本題に入ってもないのに、指を折っただけで女は瀕死状態になって、か細い声でやめてやめてごめんなさいごめんなさいごめんなさいって顔を涙や鼻水でぐちゃぐちゃにしながら懇願して謝罪してんの。笑えるよな。やめるわけがないし、そっちは何も悪いことなんかしてないのにな。でも俺が知らないだけで、何かしらの罪悪感を抱えてるのかも。別にどうでもいいけどな。そんなこと。良い女だろうが悪い女だろうが、俺には関係ないんだ。女の素性に興味はないし、女の容姿にも興味はない。あるのは髪の毛だけなんだよ。そう、髪の毛。黒くてストレートの髪の毛。長さは短くても長くてもどっちでもよくて、とにかく俺は、黒髪ストレートに興味があるんだ。それが好きなんだ。サラサラで手触りの良い髪の毛を好んで蒐集してる。集めて何かするわけじゃなくて、ただ集めてるだけ。自分の好きなものをコレクションとかするだろ? それと一緒の感覚。俺は綺麗な髪の毛が好きだから、コレクションとして集めてるわけ。いろいろな人間の頭から生えたいろいろな手触りの髪の毛を。同じストレートでも、やっぱり人によって少し違うんだ。自然なストレートか、人工的なストレートか。俺はどちらかというと自然な方が好きだ。もちろん手を加えられた髪の毛もしっかり蒐集してる。寧ろそっちの方が多くて、生まれつきのものは意外と少ないな。なかなかお目にかかれない。だからこそ、その髪の毛に出会えた時は、我を忘れてしまいそうなくらい興奮する。ほら、もう、想像しただけで下半身が反応しそうだ。困るよな。凄く困るよな。興奮する度硬くなるなんて。困る。困る。女の裸なんか見ても全く反応しないのに、好きな髪の毛を見つけた時にはオーバーリアクションを取るんだ。俺の下半身。相変わらず元気だよな。困るな、全く。
 俺は髪の毛がほしいんだ。女から髪の毛を奪うために拘束して指を破壊した後、今度は椅子に座らせて、更に固定する。腹と椅子の背をまとめて、用意していた縄でぐるぐる巻きにするんだ。ぐるぐるぐるぐる。何重にも何重にも何重にも。ぐるぐるぐるぐる。俺は心配性だから。念には念を入れて、結束バンドと同じようにきつく絞めて、きつく、きつく、絞めて、内臓を潰すようなイメージで絞めて、巻いて、ぐるぐる巻いて、巻いて、巻いて、絞めて、巻いて、絞めて、巻いて、巻いて、一つの縄を全て使い切りそうになったところで、また、きつく、頑丈に、もう手では解けないくらいに強く、強く、結んで、はい、これで、ようやく終わり。上半身の固定がな。次は下半身だ。すぐ蹴ってくる乱暴な女もいるから、両手と同じように両足も使えなくさせる。指の骨を全部折ってやってもいいんだが、俺にとっては、例え女でも足の指は汚くて臭いから触りたくないんだ。そこで使うのがハンマー。これは指を壊す時にも使うことがあるものなんだよ。潰す方法が、これ。これで、叩き潰す。狙うは脛。弁慶の泣き所。ここ、ちょっと当たっただけでも痛いよな。皮膚が薄くて、直接骨に響くから。効果抜群なんだよ。
 錯乱する女を前にしても躊躇なんか一切せずに、足の脛目掛けてハンマーを思い切り振り下ろしたんだ、俺。一発、二発、三発。最初は抵抗しようとしていた足も、徐々に力をなくしていく。四発、五発、六発。あまりの痛みにもう動かせないのか、足の力が抜けていく。七発、八発。九発。中途半端に終わらせるわけにはいかないから、徹底的に。十発。十発? そんなに叩いたっけな、俺。いや、ちょっと、あれかも。盛ったかも。そんなに叩いてはなかったかもしれない。いや、やっぱり、叩いた? あれ、どっちだったかな。まあ、別にどっちでもいいか。とにかく、一発一発しっかり叩いて両足も壊したんだ。骨はきっと砕けたし、そんな音もしたし、血も大量に流れた。それでもまだ女の意識はある。骨を折ったり脛を叩き潰したりしただけではなかなか死ねないらしい。気絶もできないらしい。激痛ですぐに意識を呼び戻されるんだとか。早く楽にさせてあげようかと思ったが、そんな気分じゃなかった。そんな気分になったことすらないから、いつもそう思うだけで終わってるが。
 女の身体を半壊したら、俺の本来の目的である髪の毛の蒐集を始める。こっちが一番大事。身体の方は雑に扱ってきたが、髪の毛はそうはいかないんだ。丁寧に集める必要がある。パニックになっている女に上を向かせて、常備しているナイロン袋に垂れた髪の毛をひとまず入れる。簡単そうに見えるが、言うことを聞かさないといけないから意外と大変なんだよ。混乱していて俺の声が聞こえていなかったり、ゆるゆると首を振ってせめてもの抵抗を見せたりするから。素直に従ってくれない時は、仕方がないから顔面を殴る。殴って、殴って、殴って、殴って、殴って。それでやっと、上を向いてくれるんだ。俺が髪の毛を集めやすいようにしてくれるんだ。最初からそうしてくれると、俺としてはありがたいのに。ほら、こっちも、殴ると手が痛いから。できるだけ殴りたくはないとは思ってる。でも、仕方がないから。殴って言い聞かせるしかないんだよ。じっとしてろ、って。黙って上を向け、って。そこまでしないと従わない女が多くてな。かなり手が焼ける。
 髪の毛を貰うための第一段階が終わると、次は第二段階。これが一番慎重にやるべきことかもしれない。一本も落としたくないんだ。見逃したくないんだ。全部の髪の毛をナイロン袋に入れて持ち帰るまでは気が抜けない。深呼吸をして集中力を高めて、逸る気持ちを抑えて、早速俺は取り掛かる。使用するのはバリカンだよ、バリカン。ハサミでもいいかなとは思ったが、あれだと綺麗に根本までは切れないし時間がかかるから。その分バリカンだと一気に落とせる。女は絶望するけどな。やめてくださいたすけてくださいって、パンパンに膨れ上がった顔で、ぐちゃぐちゃに乱れた醜い顔で、言うんだよ。やめてくださいやめてくださいたすけてくださいたすけてください。何度乞われてもやめるつもりもないし助けるつもりもないのに、繰り返し繰り返し繰り返し。そろそろ聞き飽きてきた。でも、興奮してきた。嫌がる女を無視して髪の毛を奪うことに、もう少しで髪の毛を手に入れられることに、徐々に興奮してきた。身体が熱い。息が荒い。すう、はあ。すう、はあ。大きく深呼吸を繰り返しても、繰り返しても繰り返しても繰り返しても、どうにも抑えられない。楽しい楽しい楽しい時間の始まりだ。
 バリカンのスイッチを入れた。女の顔面は殴られたことで真っ赤に腫れている。そのせいで分かりにくかったが、目が確実に青褪めた時に見せる目に変わっていた。女は青褪めている。バリカンを見て、俺を見て、何もかも察して、青褪めている。嫌だ嫌だと拒否するから、殴ってやった。やめてやめてとうるさいから、殴ってやった。殴って、殴って、殴って。もう数え切れないほど殴ってやった。追加でどんどん殴ってやった。黙ってじっとすることができない女が悪いんだ。俺はあんまり殴りたくはないと思ってるのに。これは俺に殴らせるようなことをする女が悪いだろ。完全に。俺は髪の毛がほしいだけ。そのために、邪魔されないよう両手足を破壊して、椅子に縛り付けてるだけなのに。いつもいつもこうなる。大人しそうな女を見つけても、パニックになれば結局は暴馬。そろそろ方法を変えた方がいいかもしれない。また考えてみるか。もっと効率よく楽に髪の毛を集める方法を。とりあえず目の前の女はこれまで続けてきた方法で終わらせる。考えるのはこれが終わってからだ。ああ、早く、髪の毛を取ろう。黒くて指通りの良いサラサラな髪の毛。うん、最高。バリカンの刃を生え際に押し当て後方に進める。最高。最高。気持ちがいい。情けない声を上げて嫌がる女は無視だ。両手足を使えなくさせた上に、もう何十発と顔面を殴ったから、どこもかしこも容易には動かせないだろう。問題ない。殴るのは後でいい。
 髪の毛が落ちていく。ナイロン袋に落ちていく。頭皮から切り離され、勝手に落ちていく。快楽すら覚える瞬間だ。これは俺の髪の毛だ。俺の大事なコレクションだ。全て手に入れるために、どんどん毛髪を剃っていく。興奮する。だんだん肌色が増えていく。興奮する。みるみる女の顔面が死んでいく。興奮する。興奮しすぎて、気持ち良すぎて、気が狂ってしまいそうだ。髪の毛。俺の。俺の髪の毛。もう、全部、全部、全部、奪う。貰う。もう少し。もう少しだ。もう少しで。ほら。もう。剃り終わる。女から髪の毛を切り離せる。もう少し、もう少し、もう少し、あと少し。あと、少し。あと、あと、少し。ああ、はは、やった。終わった。終わったよ。全部、全部、剃ることができた。俺は、俺が求めていた髪の毛を手に入れた。やっと、やっと、手に入れた。手に入れたんだ。気持ちがいい。最高の気分だ。最高の気分で、髪の毛がたっぷりと入った袋の中に、俺は手を突っ込んだ。癖になる触り心地だ。気持ちいい。気持ちいい。気持ちいい。あまりの気持ちよさに、俺は射精してしまった。直接触らずとも、俺は射精ができるようになった。これは、普通のセックスよりも、遥かに気持ちがいいものだ。この快楽を知ってしまったら、もう抜け出せない。後片付けをしたら髪の毛を持ち帰って、思う存分堪能しよう。
 まだ細く息をしながら絶望顔を晒している女を間髪入れずに殴った。もう死んでいてもよさそうなものだが、意外と人間は頑丈なんだよ、これが。だから、もう一度殴った。手が痛い。更に殴った。手が痛い。連続で殴った。手が痛い。ああ、手が痛い。手が、痛い。手が痛い、から、やめた。やめたやめた。殴るのはやめた。手が痛い。こうなったら、ハンマーを使おう。確実に息の根を止めるために、足を壊したハンマーで今度は頭をかち割ろう。そうだ。それがいい。そっちの方が楽だ。手も痛くないはず。良い案だ。凄く良い案だろ。女の頭から生えていた髪の毛はもうないから、俺がしっかり貰ったから、大量の血に塗れようが傷がつこうがどうでもいいんだ。もうただのゴミだから。大きな大きな人型のゴミだから。ゴミを大事にはしないだろ。ああ、でも、そんなゴミでも、ストレートの黒髪を今日まで清潔に保ってくれたことには感謝しないとな。日々ケアしてくれていた髪の毛、ありがたく頂戴するよ。ありがとう。ありがとう。ハンマーを振り上げた。ありがとう。ありがとう。ハンマーを握り直した。ありがとう。ありがとう。ハンマーを振り下ろした。ありがとう。ありがとう。振り上げて、振り下ろす。振り上げて、振り下ろす。振り上げて、時々握り直して、振り下ろす。ありがとう。ありがとう。ありがとう。本当に感謝してるんだ。人に感謝されながら死ねて、良かったな。俺が責任を持って、処分しておくから。安心して。こんな醜い姿を、誰にも見られないようにしておくから。安心して。安心して、死んでいいから。更に思い切り、俺はハンマーを振り下ろした。
 頭が陥没した。何度も骨を砕くような手応えがあった。女の頭部や顔面は、血や涙や鼻水、涎で酷い有り様だった。その状態で、絶命している。髪を奪い、殺せた達成感に恍惚としてしまいそうだったが、ふと不安になって女の首筋を触った。俺は心配性だ。言ったな。言ったよな。俺は心配性だから、やりすぎくらいにやっておかないと不安なんだ。医者がするみたいに脈を測ってみる。測れない。場所が違うのか。指先を移動させる。測れない。また、移動させる。測れない。脈が見つからない。いや、脈がない。ということは、確実に死んでいる。死んでいると思う。俺は医者ではないから、もしかしたら見当違いな場所に触れているかもしれない。少し考えて、今度は首を絞めてみた。ぎゅう、と絞めてみた。触れる面積が増えたことで、手のひら全体で脈の位置を確認できる。どこにも脈動は感じない。やっぱり、ちゃんと死んでくれている。よしよし、完璧だ。最後の仕上げをすれば、もっと完璧だ。女を消す。見つかっても、誰なのか簡単には判別ができない状態する。そうしてやれば、今の、醜悪な姿は晒さなくて済むだろ。その後の姿は保証できないが、そこまで気を遣ってやる筋合いはない。
 最初からそのつもりで、何もかも準備している。俺はナイロン袋の持ち手の部分を結び、バリカンやハンマーと一緒に持参していたバッグに押し込んだ。入れ替わりに別のものを取り出す。マッチ棒だ。勘の良い人はきっとここで察する。そう、燃やすんだよ。死体を燃やして終わらすわけ。死体を運んで埋めるか捨てるかすることを考えたが、あれは体力を使う。死んだ人間は意思をなくしているから、例え女であっても重いって知ってるだろ? それなら燃やしてしまった方が簡単だ。火事になって誰かが通報し、消防が駆けつけ、消火し、そこで、黒く煤けた死体を発見すれば、警察やその他の関係者が駆けつけるだろうが、その時には俺はもういない。別に俺がやったことが明るみになるのは怖くないが、せっかく貰った髪の毛を堪能できずに捕まるのだけは避けたい。それだけはどうしても譲れない。早々に邪魔されたら、其奴を殺してしまいたいくらいには。いや、殺す。確実に殺す。髪の毛も黒くなくてストレートでもない、俺に無益な人間はできれば殺したくはないが、邪魔されたら致し方ない。殺してまた燃やす。それで許してやる。
 女の死体に、頭からガソリンをかけた。これも用意していたものだ。飛び散らないようにゆっくりと注ぎ、しっかりとガソリンを吸わせた後、少し距離を取ってからマッチ棒に火をつけた。オレンジの小さな炎ではあるが、ガソリンを撒いたことで燃え広がるのは早い。ガソリンで濡らした死体へ向けて、火のついたマッチ棒を躊躇うことなく投げ入れた。死体があっという間に炎に包まれる。思わず見惚れた。ゴミが消えていく。ゴミが燃えていく。焼かれているのは人型のゴミだが、締め括りには相応しい素晴らしい光景だ。暫し眺めてから、巻き込まれてしまう前にその場を後にした。
 成し遂げた。やり遂げた。一番の目的である髪の毛も入手できた。もう何度も繰り返していることだが、飽きる気配はない。寧ろ回数を重ねる毎に、ゾクゾクとした興奮度が増していく。慣れ始めてきたからか。そのおかげで、余裕が生まれてきたからか。優秀な刑事に逮捕されたら逮捕された時だ。それまでは、決してやめるつもりはない。黒髪ストレートの髪の毛を持ち帰ることも、その後、徹底的に殺して燃やすことも。それらの行為は俺にとって、快楽そのものだ。ああ、今回も、気持ち良かった。帰ったらもっと、気持ち良くなろう。新しい髪の毛をたくさん、たくさん、愛でて、他の人間の髪の毛と一緒に丁寧に飾って、たくさん、たくさん、写真を撮って、気持ち良くなろう。最高の時間が待っている。そう思うだろ? 俺にとってはそうなんだ。そうなんだよ。幸せだ。これが俺の幸せだ。俺は多幸感を覚えながら、奪い取った髪の毛を家に持ち帰った。
 大体こんな感じで、こんな方法で、俺は髪の毛を奪って持ち帰ってる。ついでにしっかり殺してる。燃やしてる。臨場感のある話だったら嬉しいよ。うん。殺人に興味がある人で、俺が行ったのと同じ方法で殺してみるのは全然いいが、それで失敗したり逮捕されたりして文句を言われても、責任は取れないからな。俺も完全犯罪はできてないんだ。そこまで頭が良いわけじゃないから。逮捕されたら逮捕された時。俺は髪の毛を奪えたらそれでいいし、おまけで人を殺せたらそれでいい。この楽しさを分かってくれる人は、きっと俺と同類だ。髪の毛に性的な興奮を覚える人か、ただ単に猟奇的な方法で人を殺すことが好きな人か。俺は殺人よりも髪の毛の方が好きなんだよ。黒髪でストレートの髪の毛が。蒐集しないと気が済まないくらいにとにかく好きなんだ。殺人はその次くらい。いつだって、優先順位は髪の毛。俺が性的に興奮するのも、女の裸体なんかじゃない。髪の毛。ああ、なんだろう、また、別の髪の毛がほしくなってきた。探して取りに行くか。うん、うん、そうしよう。じゃあ、そういうことだから、俺はそろそろお暇するよ。新しい髪の毛をまた探して、奪って、家に追加したいんだ。黒髪ストレート、黒髪ストレートは、どこにある? 黒髪ストレートだったら誰でもいいんだよ。誰でも。ほら、あそこにいる女は。ああ、違う。あっちにいる女は。なんだ、あれも違う。あの女は。違うな。あの女も。違う。あの女。違う。違う。違う。違う。ちが、あ、あれ、違わない。あれだ。あれは、そうだ。いた。いたよ。発見。あの女は絶対そう。違わない。黒髪だ。黒髪。綺麗に風に靡いてる。興奮するな。黒くて艶やかで、指通りの良さそうな質の良い髪の毛。興奮する。決めた。次はあの女にしよう。あの女の髪の毛に決めた。全て奪って、殺して、燃やして。黒髪ストレートの髪の毛を、俺だけのコレクションにする。その時まで、黒髪ストレートを維持したまま待ってろよ。



END