目を開ける。


もうとっくに疲れ切った
心は楽になりたがっている。


下を通る車を眺め、
柵に手をかけた、その時。


「__お前、死ぬのか?」


右の方から掛けられた、静かな低い声。


声がした方を向くとそこには、
黒いパーカーを着た男の子が立っていて。


まっ黒なサラサラな髪の毛、
ずっと通った鼻梁、薄い唇。


__そして硝子玉のような淡い水色の瞳。


どこか不思議な雰囲気を纏う彼は、
まっすぐ射貫くような眼で私を見ていた。


「...うん。」


気づいたら、なぜか答えていた。


知らない人だから、無視しても良かったはずなのに。


なんでかな、無視、できなかった。


「...そうか。なんで、
 お前は、死ぬんだ?」


彼の表情に少し哀しそうな色が見えた気がした。


「...わたしは、」


こんな風に私の眼を、
まっすぐ見てくれる人に
出会ったのは、いつぶりだろう。


彼に話してみたい、と思った。


「__記憶喪失、なんだ。」


彼と私の髪の毛が風で揺れる。