「シズルくん」

「リオル、卒業おめでとう」

「シズルくんも、卒業おめでとう」

 シズルくんは「リオルにさ、あげたいものがあるんだけど」と私に言う。

「あげたいもの……?」

 なんだろう?と考えていると、シズルくんはブレザーのポケットからボタンを一つ渡してくれた。

「これは?」

「俺の制服の第二ボタン」

「第二ボタン?」

 どうして私に第二ボタンをくれたのだろうか?

「第二ボタン、リオルにあげるって決めてたから」

「そうなの? でもこんな大事なもの、本当にもらっていいの?」

 シズルくんは「ありがたく受け取れよ。俺の気持ちだから」と微笑む。

「……うん、ありがとう」

 私は受け取った第二ボタンをブレザーのポケットにしまいこんだ。

「代わりと言ってはなんだけどさ」

「ん?」

「リオルの第二ボタンもちょうだい」

「えっ? 私の第二ボタン?」

 それって、私の第二ボタンが欲しいってこと?

「俺リオルの第二ボタン、欲しいんだけど」

「私ので良ければ……まあ、うん。いいよ」

 それって交換ってことだよね?

「はい」

 シズルくんに第二ボタンを手渡すと、「ありがとう、リオル」とそれをズボンのポケットにしまいこんだ。

「私ので良かったの?」

「リオルのがいいんだよ」

「そっか」

 もう卒業か……。三年間、あっという間だったな。
 シズルくんはずっとクラスが一緒で、仲良くしてくれたし、本当に感謝してる。