「……シズルくん、なんで嬉しそうなの?」

「アイツ、おもしろいじゃん。 リオルのこと、俺から奪うってさ」

 楽しそうに微笑むシズルくんに、私は「ねえ、なんか楽しんでない?」と問いかけると、「楽しいよ、俺たちライバルみたいだしな?」と私の頭に手を乗せて教室を出ていく。

「ちょっと待ってよ、シズルくん!」

 慌てて後を追いかけると、シズルくんは「彼氏のフリ、しばらく続けないとな」と笑っている。

「冗談言わないでよ……」

「俺たちライバルなんだぜ? 燃えるな」

「なによそれ」
 
 やっぱり楽しんでるじゃん! シズルくんもミツキくんも、楽しんでるよね?

「あ、デートはちゃんとしてもらうからな」

「わかってるよ」

「かわいい格好してこいよ」

「……え?」  

 かわいい格好ってなに? わからない。

 シズルくんとミツキくんの恋の攻防戦、終わりは来るのだろうか?

「……リオル」

「ん?」

 シズルくんが立ち止まって私を見る。

「俺、アイツなんかに負けないから」

「……え?」

「てか負ける気しないわ」

「そ、その自信ってどこからくるの……?」

 よくわからないけど、二人は恋のライバルということらしい。
 

* * *
   

 数日後、無事に卒業式を迎えた私は、今日学校を卒業した。
 なんだか卒業証書が重たく感じる。