「えっ……?」

 ウソだと思いたい。 あれは結構不味かったよ?
 私も不思議な気持ちになりながら、肉じゃがを口にした。

「……あれ?」

 たしかに美味しい。……え?なんで? どうして?
 そこでハッと気付いた。

「まさか……」

 もしかして……最後に入れたソースのせい? 最後にもっと不味くしようとして、ソースを入れたのだが、まさかのソースのせいで美味しくなってしまったようだ。

「うう……」

 なにやってんの、私っ! なんで美味しくなってしまってんの!
 不味い料理を敢えて作ることがミツキくんに嫌われるための作戦だったのにっ!

「リオル様、このだし巻き卵も美味しいです」

「そ、そうですか?」

 だし巻き卵に関しては、母が作ってくれたものを出しただけなので、私の料理とは全く関係がない。
 私が作ったのは肉じゃがだけなのだが、まさかこんな結末になるとは……。
 あの時、ソース入れない方が良かったじゃん! ソース入れなきゃ不味く仕上がってたのに!
 
「本当に美味しいです、リオル様」

「そ、それは良かったです……」

「リオル様は料理がお上手ですね」 
 
 私はなんて余計なことをしたのだと思ってしまった。 不味い料理で嫌われるはずが、まさかの美味しい料理になってしまうなんて……。
 これじゃ嫌われるどころか、また好感度が上がってしまうかも……!?
 ダメダメッ! 絶対に嫌われて結婚が白紙になるようにしなきゃなんだから!
 ここでめげちゃダメだ、がんばれ私!