そして夜になり、ミツキくんは家にやってきた。

「リオル様、今日はお招きありがとうございます」

 手土産でフルーツタルトで有名なお店のフルーツタルトを持ってきてくれたミツキくんは、私の手料理が食べられるということもあり、ワクワクしたような顔をしていた。

「こちらこそ、来てくれてありがとう」

「誘ってくださるなんて、嬉しいです」

 ミツキくんをダイニングテーブルに案内すると、用意していた食事をテーブルに並べた。

「おお、美味しそうですね」

「お口に合うか、わかりませんけど」

 と言ったものの、絶対に合うわけがない。 だってわざと不味いものとして作ったのだから。
 そりゃあ不味いんだから、美味しいなんて言うはずが……ない。
 手を洗うミツキくんの後ろ姿を見つめながら、これでどうか嫌われることを祈っていた。

「いただきます」

「どうぞ」

 嬉しそうに肉じゃがを頬張り始めるミツキくん。そして……。

「……うん?」

 ミツキくんは顔を一瞬だけどしかめた。

「ミツキくん……どう?」

 きたっ!? やっぱり不味いよねっ!? そうだよね!ミツキくん!?

「美味しいです!」

「……へっ?」

 美味しい? 美味しいって言った? 
 いやいや、そんな訳ないよ。だって不味く作ったはずだもん。
 美味しいなんてことがある訳がないのに……。

「この肉じゃが、美味しいですよ」

 思わず「ウソですよね?」と聞き返すと、ミツキくんは「本当に美味しいですよ」と微笑んだ。