触れられた頬が熱くて、ドキドキする気がした。

「リオル、アイツなんかやめて俺にすれば?」

「……え?」

 シズルくんに見つめられて、私はなぜかその瞳から離れなくなる。

「俺の方が、お前のことわかってるつもりなんだけど」

「シズル……くん?」

「俺と結婚する?リオル」

「えっ……!?」

 け、結婚っ!?

「冗談だよ。……でもお前のこと好きなことに、変わりはないけど」

「……シズルくん」

 私はシズルくんに好きだと言われて嬉しいとは思った。
 でも……。

「ごめんね、シズルくん」

 私はシズルくんの手を離すと「シズルくんとは、付き合うことは出来ない」と伝える。

「……そっか。わかった」

「ごめんね」

「謝らなくていいよ」

 シズルくんは「じゃあ、俺こっちだから。 また学校でな」と手を降って青信号を渡っていった。

「……好きだって言われて、嬉しかったな」

 誰かにちゃんと好きだって言われたことは、初めてかもしれない。
 正直に言うと、嬉しかった。

 でも余計なことを考えるとおかしくなりそうなので、余計なことを考えることをやめた。
 卒業まで後一週間だ。卒業すればシズルくんとも会うことはなくなる。
 どうにかして結婚を阻止するために、彼に嫌われなければ。……ミツキくんにどうしたら嫌われるのか。
 
 この間も嫌われ作戦を決行したが、なんにも響きそうになかった。むしろかわいいと言っていて、好感触になってしまった。