そう言われてぎょっとなった。 すっかりと忘れていた……。

「あの話のこと……なんだけどね」

「おう」

「私……実はね」

 婚約者がいるということを、正直に話すべきではないと思っている。

「婚約者がいるの」

 それを聞いたシズルくんは察したのか、「もしかして……この前のあのイケメン?」と聞いてきた。

「……うん。婚約者なの、彼」

 シズルくんは「そっか。婚約者がいるんだ、リオル」と私を見つめる。

「うん……許嫁なの、五歳からの」

「はっ? 五歳?」

 私は「うん。五歳の時に決まった許嫁なんだって、私」と話したら、シズルくんは「で? その許嫁がつまり、あのイケメンってことか?」と聞き返してくる。

「うん。そうみたい」

「そうなのか。それは残念」

「……この前十八になった時にね、婚約者ですって言われたの。ビックリしちゃった」

 私がそう話したら、シズルくんは「そんな得体のしれないイケメンと、本当に結婚すんの?」と聞いてきた。

「……結婚する気はないって、言ったけどね」

「ならなんでそんな顔してんの?」

「え……?」

 シズルくんは立ち止まると、私の腕を掴んだ。

「結婚する気、ないんだろ? ならなんで、そんな顔してんの?」

「……私、結婚する気ないの。 でも……ミツキくんが優しくて、なんかドキドキしちゃうんだよね」

 シズルくんにそう話したら、シズルくんは私の頬に手を触れる。

「え……?」

「これも、ドキドキすんの?」