「えっ……?」

 ちょ、ちょっと、手がっ……!

「あ、あの、ミツキくん?」

「なんでしょうか?」

「その、手……」
  
 握られた手に視線を向けると、ミツキくんは「繋ぎたかったんです。ダメですか?」と見つめられたら、さすがにダメだとは言えなかった。
 なんとしても嫌われようとしているのに、その心がミツキくんに向いている気がしてしまった。

「……どうして」

 どうして私は、ミツキくんの前だとダメだと言えないのだろう。

「ミツキくん……あのね」

「はい」

 それでも私は「なんでもない」と答えるしかなかった。
 なんとしても、早く婚約破棄が出来るように嫌われ作戦を実施せねば。
 

* * *


 卒業式を一週間後に控えたある日。図書館で勉強をしようと図書館に向かっていた時のことだった。

「リオル」

 私の名前を呼ぶ声が聞こえて振り返ると、そこにいたのはシズルくんだった。

「……シズルくん?」

 どうしてシズルくんがここにいるんだろう?

「勉強しに行くのか?」

「うん、そうだけど」

 私の隣に来たシズルくんは「じゃあ、俺も途中まで一緒にいいか?」と歩き出す。

「シズルくんは、どこに行くの?」

「バイト。夕方までバイトシフト入っててさ」

「そうなんだ。がんばってね」

 シズルくんは「ありがとう。……ところでさ」と私に視線を向ける。

「ん?」

「あの話、考えてくれた?」

「あの話……?」

「俺と付き合うって話」