二月も残り二週間となろうとしていた。そろそろ卒業式の準備が始まる頃だ。
卒業した後の進路はみんなバラバラだけど、私は大学に落ちてしまったので浪人するかどうかも決まっていない。
そんなある日のことであった。
「リオル、久々だな」
卒業式の練習があるため久々に学校に来ていた私は、同級生のシズルくんと再会した。
「うん」
「そういやさ、お前彼氏出来たの?」
「えっ? どうして?」
シズルくんにそう聞かれてビクッとした。
「いや、この間カラオケで男と一緒にいるの見かけたから」
「えっ!」
まさか、あの場面目撃されてた……?!
「あのイケメン、彼氏?」
「……彼氏っていうか、なんていうか……」
なんて言えばいいんだろう? 彼氏ではない?
でも一応、婚約者ってことになってる……んだよね?
「こ、こんや……恋人、ではないよっ!」
危ない。今私、婚約者って言いそうになった。
婚約破棄を望んでいる相手を、婚約者と言ってしまいそうになった。
「そうなのか? じゃあ友達?」
「友達……みたいなものかな」
そういうことにしておこう。じゃないと何か深く突っ込まれそうで怖い。
「へえ? てっきり彼氏なのかと思ったわ」
「ち、違うよっ!」
「そっか。じゃあ良かった」
「へ……?」
よ、良かったって……なに?
「俺、お前のこと結構かわいいなって思ってたから。彼氏いないなら、俺立候補しようかな、リオルの彼氏候補に」