「ご、ごちそうさまでした」

「もういいのですか?」

「な、なんかお腹いっぱいになっちゃって」

 ダメだ。このままじゃ私……。

 どうにしかしてミツキさんに嫌われる方法を考えなければ。

「じゃあそれ、僕が食べていいですか?」

「えっ……?」

 私のトレイに乗ってるポテトに手を伸ばすと、ミツキさんをそれを頬張り始める。

「うん、美味しいポテトですね」

「……そ、そうですか」

 私、ミツキさんの笑顔を見るのが、なんか嬉しくなってる……? 
 いやいや、これは幻覚だ。 そんな訳はない。

 私はミツキさんとの結婚を回避しようと考えて、わざと嫌われようとしているのだから。
 カラオケは失敗してしまったけど、次は絶対に失敗しない。 今度こそ、嫌われるんだから。


* * *


「おやすみなさい、リオル様。今日はとても楽しかったです」

「はい。……おやすみなさい」

 家の中に入ると、案の定誰も帰ってきてなかった。
 安堵して、深呼吸をする。

「なんで……」

 なんでこんなにドキドキするの? 私、ミツキさんに嫌われたいはずなのに……。

「……お風呂入ろう」

 お風呂に入って身体を温めよう。そして次の嫌われ作戦を考えよう。
 しかし湯船に浸かりながら考えるのは、今日のデートのことばかりだった。
 
「……ふふふ」

 まさかミツキさんがあんなに歌が苦手だったなんて……。意外すぎて笑ってしまった。
 私より下手だなんて……。