いや、ちょっと待って……。このタイミングで婚約者が現れたってことは……まさか?

 戸惑う私に、ミツキさんは「リオル様」と私の名前を呼ぶ。

「は、はい……?」

 ミツキさんが私の手を握るから、思わずビックリしてしまう。

「僕はあなたを迎えに来ました」

 む、迎え……? なに?どういうこと?

「リオル様、僕と結婚しましょう」

「……えっ?」

 け、けっ、こんっ……!?

「け、け、結婚……っ!?」

 いきなり「結婚しましょう」と言われても、訳がわからなくなるからやめてほしい。
 いきなり私に現れて「婚約者です」と言われても、冗談としか思えない。
 そもそも、婚約者がいるなら私も両親に聞いているはずだ。 今まで一度もそんなことを言われたことはないのだから、信じられるはずがない。

 本当に私には許嫁がいるの? この人は本当に、私の婚約者なの?
 訳がわからなすぎて、どういう反応をすればいいのかもわからない。
 こういうのを素直に受け入れられる人は、いるのだろうか? いきなり僕と結婚しましょうで、そういうのを成立させられる人はいるのだろうか。

 交際ゼロ日婚じゃあるまいし、そんな都合のいいことが起こるはずがない。
 そうだ、これは夢よ。全部夢なのよ、夢。 私はリアルな夢を見ているんだ。
 変な目を夢を見ているせいで、こうなっているんだ。……これはまさに、現実のような夢よ。
 現実に起こるはずがない、こんなことが。