それは誕生日の翌日の出来事だった。

「初めまして、リオル様。 僕の名前はミツキと申します」

「……はい?」

 今目の前に立っているこの男性は、自分のことを【ミツキ】と名乗った。
 突然私の前に現れたミツキという男性は、すらっとしていて、背が高く黒髪がよく似合う男性だ。

「ずっとお会いしたかったです、リオル様」

 私に対して優しいその微笑みを浮かべて、私をジッと見つめている彼に、私は「あの、どうして私の名前を……?」と問いかけてみる。

「リオル様は、僕の婚約者様ですので」

「……はい?」

 今なんて言われたのか、一瞬わからなかった。 でも幻覚でなければ、今私は彼の【婚約者】だと聞こえた。

「リオル様は、僕の婚約者様です。 僕とリオル様ば許嫁゙だと聞いていますよ?」

「い……いい、なず、け……?」

 許嫁って……あの許嫁?

 待って待って、状況がわからない。 婚約者様って……なに?
 許嫁とは……? 私が彼の婚約者……? 

「僕たちは、両親同士が決めた許嫁だと聞いていますが。……もしかしてリオル様は、ご存知ないのですか?」

「ご存知もなにも……なにも聞いてませんが」

 許嫁って……なに? 婚約者とは……?
 しかも今、両親同士が決めたって……。

「あの、あなたが私の婚約者って……本当ですか?」

 私に婚約者がいるなんて話は、一度も聞いたことがない。 私に許嫁がいるなんて……一度も。

「本当ですよ。 僕は両親から、そう聞いていますので」