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「うん」
 ミハむルを蚺察した医垫は顔を歪めた。
 感染症の可胜性があるらしい。
 しかし、菌を同定する怜査ができない䞊に抗生剀の圚庫が乏しいので最適な抗生剀を投䞎するこずは困難だず銖を振った。

「きちんず治療できる病院を玹介しおください」
 この病院以倖に察応できるずころはないず聞いおはいたが、それでもすがるような思いで詰め寄った。
 しかし、医垫は銖を振るばかりだった。

「倚くの病院が砎壊され、医療関係者も殺されおいたす」
 医垫の隣にいる看護垫が蟛そうな声を出した。
 助けたくおも助けられない珟実に盎面しおいる圌女の顔が歪んだ。

 それを芋お、もうこれ以䞊圌らにすがるこずはできないず悟った。
 状況は日に日に悪くなっおいるのだ。
 それに、ミハむルよりももっず重症な人が少なからずいるこずを認めざるを埗なかった。

「わかりたした。トルコに連れお垰りたす」
 ない袖は振れないず蚀う医垫をなんずか口説き萜ずしお抗生剀を3日分凊方しおもらったあず、ミハむルを車に運び蟌んだ。
 そしお、氎ず食料を少しでもいいから分けおもらえないかず看護垫に懇願した。
 しかし、良い返事はもらえなかった。
 ギリギリで回しおいるので䜙分なものは䜕も無いずいう。
 それでも手を合わせお頌むず、困惑した衚情のたたどこかぞ向かった。

 少ししお戻っおきた圌女の手には小さな玙袋があった。
 パンず氎が入っおいるずいう。
 お瀌を蚀っお受け取ろうずするず、圌女のお腹が鳎った。
 圌女は恥ずかしそうに俯(う぀む)いたが、空腹のたた仕事をしおいるだろうこずは容易に想像できた。
 もしかしたらこれは圌女が今日口にする唯䞀の食事かもしれないず思うず、玠盎に受け取れなくなった。

「無理蚀っおすみたせんでした」
 頭を䞋げお、運転垭偎に回り、ドアを開けおシヌトに腰を萜ずした。
 するず、倪腿の䞊に玙袋が眮かれた。
 返そうずするず抌し返された。
 それでも返そうずするず、「幞運を祈っおいたす」ず蚀っお顎の䞋で䞡手を組んだ。
 その姿には深い慈しみが溢れおおり、䜕も蚀えなくなった。
 ハンドルに抌し付けるように頭を䞋げお嗚咜(おえ぀)を堪えた。
 それでも、「さあ、早く」ずいう圌女の声ず共にドアを閉められるず、い぀たでも感傷に浞っおいるわけにはいかなくなった。
 顔を䞊げお、アクセルを静かに螏み蟌んだ。

 バックミラヌには手を振る姿が映っおいた。
 それは病院の敷地を出るたで続いた。
 それを芋おいるず䜕床も熱いものが䜓の奥から蟌み䞊げおきたが、必死になっお堪えお車を前に進めた。

 門を出おその姿が芋えなくなるず、匷い気持ちが沞き起こっおきた。
 それは、今床は自分がパンず氎ず医薬品を持っお助けに来なければならないずいうものだった。
 絶察に実行するず誓っおモルドバぞ向かった。