けれど、ライアンとの結婚は最初から『白い結婚』だと言ってくれているので、それはそれで良いし、二年後には何もなかったように解放してくれるのならそれも良い。

 結婚してから社交にも慣れて来た私がアンドリュース公爵夫人として、そつなく社交をこなしていることは、社交界では既に知れていることだし、これで言うと縁談相手には困らないかもしれない。

 女主人として邸を任せることが出来るというのは、求婚者を募る際に大きな売りになるのだ。

 初対面で『白い結婚』を宣言された時には、この私だってそれなりに衝撃を受け愛されないことに傷ついたりもしたけれど、今ではそれも良いと考えている。

 二年ほどお付き合いした中でライアンは良い人で幸せになって欲しいし、私が邪魔だと言うのなら、笑顔で去ろうと心に決めていた。

 そして、その日は二ヶ月後にまで近付いていた。

「……ニコル。君は今夜は何か、用事はあるのか?」

 食堂で向かい合うライアンは、朝食を終えて、登城前に私にそう確認した。