「ああ。全て僕の誤解だったんだ。本当に恥ずかしい。君との日々も、二年も無駄にしてしまって……」

 ライアンは可哀想なくらいに落ち込んで、項垂れてしまっていた。

 私はそんな彼の姿を前に、心の中には様々な感情が湧いて来た。

 初対面の時の冷たい態度、白い結婚で良いと言い放った気のない言葉。

 あれもこれも、私に恋人が居ると思い込んでいて、自分が縁談を申し込んだことは翻せないから、せめて二年で解放してあげたいと思ってしたことだったの?

「……貴方って、とっても優秀なのに、大切なところで、とんでもない勘違いしていたのね。ライアン」

「ごめん。ニコル」

 私は落ち込んでいる彼の大きな手を取って、それを握った。

「私は……別に構わないわ。それに、二年間も貴方と恋人気分で居れて、楽しかったわよ。今までは夫婦ではなかったものね。私たち」

 少しだけ距離を空けた良くわからない関係。使用人たちだって、不思議だっただろう。別に仲が険悪という訳でもないのに、別々の部屋で寝ているだなんて。

「あの……そのことなんだけど、ニコル」

「何? ライアン」