ここ二年近く彼と暮らしていて、ライアンは無闇矢鱈に意見を押し付けるような横暴な男性ではなかったし、理由を言えば私の提案に耳を傾けてくれた。

 だから、私もこうして面と向かって、自分の感じた疑問を投げ掛けることが出来る。

 二年間で培われた信頼関係だった。

「……僕は君に、謝らなければならない事がある」

 ライアンは両手で顔を覆ってから、私のことを見た。緑色の美しい目だ。彼に見つめられて、ドキンと胸が跳ねた。

 何……? 何なの。急に。こんな……どういうこと?

「ニコル。僕はモートン家に君の縁談を申し込んだその日、ニコルが広場で男性と抱き合っている姿を目撃してしまった」

「……何ですって? どういうこと?」

 私はライアンと結婚するまでに男性と付き合ったことなどないし、不貞があるように言われてしまっては、ちゃんと否定せねばと思ったのだ。

 私の気色ばんだ空気を感じ取ったのか、ライアンは慌てて両手を出した。

「いや、すまない。少し待ってくれ。違うんだ。それが、先ほどのハリー殿だったんだ」

「……私には兄が居たことは、貴方だって、知っていたでしょう?」