ついさっき別れた兄のことかと私は頭を上げて、何気なく頷いた。何。ライアンの顔が赤いわ。どうかしたのかしら。

「彼は、以前髪が短かったか?」

「ああ……そうですね。だらしないですね。申し訳ありません。兄には注意しておきますわ」

 後頭部で括っているとは言え、流石にあの長さはみっともなかったかも知れない。

 容姿にあまり気を使わない兄のことを私が恥ずかしそうに言い片手で口を隠せば、ライアンはそうではないと首を横に振った。

「君たちは、あんな風に距離が近くて……抱擁し合う事も良くあったのか?」

「……? ありますわ。だって、私たちは兄妹ですし。それに年齢差も大きいので、兄というよりももう一人の父に近いのです」

 ライアンが声を掛けて来た時に、私たち二人は久しぶりの感動で抱き合っていたし、彼からすれば兄妹であれをする人が少なく珍しいと言われれば、私はその通りねと頷くしかない。

 けれど、兄と私の間では普通のことだったのだ。

「あの、どうしたの? ライアン。貴方、今日おかしいわよ」

 私は今思っていることを、率直にそう言った。