「いや……そうなのか。ニコル。すまない。なんでもない。そういえば、レストランを予約していると聞いたが、僕も参加する。人数を変更しておいたんだ」

「え……人数を変更? あ。そうなの。私たちは、別に構わないけれど」

 ここから近い予約をしているお店はとても人気なので、公爵家の要請からだとしても、数日前からの予約が必要なのだ。

 王都で一番であることは間違いないし、久しぶりにあの店の味が食べたくなったのかもしれない。

 兄は会ったばかりのライアンの様子がおかしいことには一切触れずに、留学時の面白かったことや興味深かったことを話してくれ、三人での食事は大いに盛り上がった。

 けれど、私は兄を送り届けた帰りの馬車の中で、ため息をついてしまった。兄にライアンと別れた後に同居をお願いするのは、また次回にしなければ。

「……ニコル」

「何かしら。ライアン」

 不意に前に座っていたライアンが名前を呼んだので、考え込んでいた私は顔を上げずに彼に返事をした。

「あの、ハリー殿についてなのだが」

「……はい」