だって、私は今朝兄に会うと伝えているはずだったのだから。

「ああ! これはこれは。アンドリュース公爵ライアン様ですね。こんな立派な人が義弟になるだなんて、なんだか信じられませんが、俺の妹を選ばれた貴方は本当にお目が高い。どうも、ニコルの兄のハリー・モートンです」

「妹……ニコルが、ですか?」

 信じられないと言わんばかりのライアンは兄の挨拶を聞いて、兄と私の顔を見比べていた。

 ……兄と妹だから、似ているかを確認しているのかしら?

 とは言っても、私は母似と言われるし、兄はどう見ても父似だと思うけれど。

「あの、ライアン。貴方は仕事の時間のはずでしょう。一体、どうしたの?」

 いつになく焦っているライアンが、私は不思議だったし、兄だって訳がわからず怪訝そうにしている。

 ライアンは質の良い外套を着ていて、いかにも彼らしい紳士な装いだけど、職場である城からの帰りであれば、もっと質素な格好になっているはず。

 もしかしたら……何か、この辺で用事でもあったのかしら? そして、私たちを見つけた?