「……姫。起きるっす」
「ん……」
目を開いた瞬間に驚きのあまり悲鳴を叫びそうになった私は、慌てて両手で口を塞いだ。
美しくて大きな黒い獅子の顔が、私を黒曜石のような大きな目で見つめていたからだ。
私が眠ってしまう前に寝顔を見ていたあの人の獣型で、間違えていない……と思う。
「……デュークなの?」
「ええ。姫。その通り、俺っす。なんで、一緒に姫が寝てるんすか。俺は自分の執務室にまで戻るの面倒だったから、夕方の会議の時間まで時間潰ししようとしただけっすよ」
とても呆れた黒獅子の低い声は、いつもより少々くぐもっては聞こえているものの確かに人の言葉を話している。
私が思った通りにこの黒獅子がデュークが獣化した後の姿だ。
————-なんて、美しいの。
通常な獅子の毛は金色だし、百獣の王の名に相応しい勇壮な姿は画家にも好まれて有名な絵画にも良く描かれている。
けれど、今のデュークの姿は、まるで明るい光を吸い込むような漆黒の毛を持つ獣だった。
デュークは私が想像していた以上に、素晴らしい別の姿を持っていた。
「……それって、デュークがお仕事をサボってた訳ではないの?」
「そういう訳じゃないですって。だから、次の会議までの必要な時間潰しっす。城の会議室から、俺の執務室まで遠過ぎるんすよ。立場の近い同僚と同じように、その辺の部屋でお茶でも飲んで、近隣国の政治について語らうと思います?」
「ん……」
目を開いた瞬間に驚きのあまり悲鳴を叫びそうになった私は、慌てて両手で口を塞いだ。
美しくて大きな黒い獅子の顔が、私を黒曜石のような大きな目で見つめていたからだ。
私が眠ってしまう前に寝顔を見ていたあの人の獣型で、間違えていない……と思う。
「……デュークなの?」
「ええ。姫。その通り、俺っす。なんで、一緒に姫が寝てるんすか。俺は自分の執務室にまで戻るの面倒だったから、夕方の会議の時間まで時間潰ししようとしただけっすよ」
とても呆れた黒獅子の低い声は、いつもより少々くぐもっては聞こえているものの確かに人の言葉を話している。
私が思った通りにこの黒獅子がデュークが獣化した後の姿だ。
————-なんて、美しいの。
通常な獅子の毛は金色だし、百獣の王の名に相応しい勇壮な姿は画家にも好まれて有名な絵画にも良く描かれている。
けれど、今のデュークの姿は、まるで明るい光を吸い込むような漆黒の毛を持つ獣だった。
デュークは私が想像していた以上に、素晴らしい別の姿を持っていた。
「……それって、デュークがお仕事をサボってた訳ではないの?」
「そういう訳じゃないですって。だから、次の会議までの必要な時間潰しっす。城の会議室から、俺の執務室まで遠過ぎるんすよ。立場の近い同僚と同じように、その辺の部屋でお茶でも飲んで、近隣国の政治について語らうと思います?」