あまり女性にモテたことのない身分としては、なんとも羨ましい限りだ。
……そういえば、アリエルは何故、俺を選んだのだろうか。
上品で王子然とした兄たちを見慣れているから、いつもとは違う味が食べたくなったというだけでは、説明がつかないような気がするが。
「プリスコット辺境伯ですか……魔物がうじゃうじゃ湧いて出ると噂の雪山から、国を守られて居られるのですから、とても強いでしょうね。是非、お手合わせ願いたいですね」
「あら! そうね。私もお会いしたら頼んでみるわ。ニクス様はあまり喋らないけれど、デュークとは違う意味ですっごく素敵なのよ」
「へえ……そうなんすか。姫はこういう関係は初めてでお作法を知らないようですけど、恋人になった男の前で違う男を褒めない方が良いっすよ。せっかく良い感じに育った辺境伯の跡取りを、御前試合の事故で殺したくはないでしょう」
アリエルは俺の話を聞いて、顔をみるみる赤くした。わかりやすい。俺に嫉妬されたとわかり、嬉しかったんだろう。
しかし、良くこんなにわかりやすくて、今まで生きてこられたと思う。母を早くに亡くしてしまったせいで三人の兄に溺愛されていたと聞いているが、彼らは可愛い可愛いと甘やかし過ぎてやり過ぎてしまったのではないだろうか。
可愛いことは、否定はしない。
「ニクス様を殺さないで……」
「ははは。冗談。ですが、俺を人殺しにしないでください。感情の制御がいつも上手く出来るとは、限らないので」
俺がそうこれからの注意事項を言うと、アリエルは何度も大きく頷いていた。