現在仮定としている関係がここで確定してしまえば、俺が辿る道はこの先ひとつしかない。
そうだとわかった段になっても往生際悪く、俺は時間を引き延ばしていたかった。
結婚前の女性が幸せなはずの結婚式前に、何故か憂鬱になるという不思議な症状は、もしかしたらこれかもしれない。
これまでは果てしない可能性を持って広がっていた未来が、一筋の道に収束していくような例えようもない感覚。
幸せになりたいかと自分に問いかければ、それはそうだろうと頷くしかなかった。不幸なままで居たい奴の気持ちがわからない。
俺はアリエル姫をこれまでは恋愛対象としては、敢えて意識はしないようにしていた。だが、結婚の約束を交わしたあの女の子本人であると言うのならば、それは別の話だ。
人生の岐路を選び、覚悟を決めるその瞬間は、俺自身が望むと望まないにしろ、もうすぐそこまで近づいていた。
◇◆◇
アリエル姫は疲れて、寝てしまった。
だいぶ加減をしたつもりだったけど、初めてだった彼女にしてみれば、これは一大事だったはずだ。