「ごめんなさい。私は、デュークには迷惑を掛けてばかりだし……迷惑がられているのも、わかっている。もう、気にしなくて大丈夫よ。違う人と、結婚するわ」
「……どういうことっすか」
デュークは立ち去ろうとしていた方向から振り向いて、私の方へと向き直った。
「今まで、本当にごめんなさい。ヘンドリック侯爵のご子息と、縁談があるの。サミュエル様は人格者で素敵な方だわ。義母上も、そうしなさいって。あの人ならば、お父様もお兄様たちも納得するはずよ。私がサミュエル様に嫁げば、誰も貴方には何も言わないでしょう」
ぽろぽろと、また勝手に目から涙が溢れた。
命の危険から間一髪助けて貰って、私はひどい興奮状態にあるのかもしれない。自制も利かないし、判断力だって鈍っている自覚はあった。
でも、止められない。
これは、今こうして話すことではないかもしれない。
これで意地悪をする彼の上司からも、断っても断っても言い寄って来る迷惑な姫から、デュークは解放されるのだ。
「……」
「本当に、デュークのこと大好きだったわ。今まで貴方の周囲で私が自分勝手をしたお詫びって訳でもないけど……これで、少しでも貴方の役に立てれば良いんだけど」
私はさっき座らせてもらったベッドの上で、彼をまっすぐに見つめた。獣姿の黒曜石のような大きな瞳からは、感情を読み取りにくい。
けど、きっとデュークはこれで喜んでくれるはずだ。
「それ……俺は、何も頼んでないっすよね。勝手なことしないで貰って、良いすか」
「……え?」
「……どういうことっすか」
デュークは立ち去ろうとしていた方向から振り向いて、私の方へと向き直った。
「今まで、本当にごめんなさい。ヘンドリック侯爵のご子息と、縁談があるの。サミュエル様は人格者で素敵な方だわ。義母上も、そうしなさいって。あの人ならば、お父様もお兄様たちも納得するはずよ。私がサミュエル様に嫁げば、誰も貴方には何も言わないでしょう」
ぽろぽろと、また勝手に目から涙が溢れた。
命の危険から間一髪助けて貰って、私はひどい興奮状態にあるのかもしれない。自制も利かないし、判断力だって鈍っている自覚はあった。
でも、止められない。
これは、今こうして話すことではないかもしれない。
これで意地悪をする彼の上司からも、断っても断っても言い寄って来る迷惑な姫から、デュークは解放されるのだ。
「……」
「本当に、デュークのこと大好きだったわ。今まで貴方の周囲で私が自分勝手をしたお詫びって訳でもないけど……これで、少しでも貴方の役に立てれば良いんだけど」
私はさっき座らせてもらったベッドの上で、彼をまっすぐに見つめた。獣姿の黒曜石のような大きな瞳からは、感情を読み取りにくい。
けど、きっとデュークはこれで喜んでくれるはずだ。
「それ……俺は、何も頼んでないっすよね。勝手なことしないで貰って、良いすか」
「……え?」